よりみちガーデンとは?

暮らし発見イベント

イベントレポート

2022.11.24

【レポート】まちの「小商い」を通して考える広がる暮らしの見つけ方

金沢文庫駅から歩いて10分のところにある、よりみちガーデン。金沢区で暮らす人、訪れる人が気軽に立ち寄ることができるコミュニティ広場として2021年3月に誕生しました。

そんな「よりみちガーデン」が、シェアキッチンがある地域の拠点として、この冬にリニューアルオープンします。 

「働く」と「暮らす」を近づけるような力を持っている「小商い」。「モノの売買」を通じて、まちのことを深く知ったり、新たなつながりができたり、やりたいことを見つけられたり……今回のイベントではそんな地域の小商いの場を作っているみなさんからお話を伺っていきます。イベントはオンライン&オフラインで発信というハイブリッド開催。多くの方と時間を共有しました。

■アットホームな空気の中、イベントスタート!

この日、登壇してくださったのはホストの京浜急行電鉄株式会社の小田楓さん、山崎茜さん。ゲストは建築家でYONG architecture studio主宰の永田賢一郎さんと、食や地域のつながりをテーマにイベントを開催しているプロジェクト「パンとコーヒーマルシェ」主宰の臼井彩子さんのおふたり。

この日のイベントはワンドリンク付きということで、みんなで乾杯をして和やかな雰囲気の中、イベントがスタートしました。

まずは、参加してくださったみなさん、そしてゲストも交えてアイスブレイク。3歩歩いた先にいた人とお互いに自己紹介をすると、少し緊張気味の面持ちだった人にも次第に笑顔が。

その後には全体でも自己紹介が行われました。

京急沿線に住んでいる人、今日のイベントのために遠くから来られたという方、まちづくりに興味がある方、大学生など、年齢、職業を問わず、さまざまな人たちが参加してくださいました。

 

■「よりみちガーデン」の新たな可能性

最初のトークセッションは山崎さん、小田さんによる「場に新たな価値を!地域コミュニティ拠点のこれから」というテーマでスタート。

2021年3月のよりみちガーデンの開業に携わり、以来、多くのイベントを行った山崎さんが、よりみちガーデンとは一体どのような場所なのかを紹介。

もともとはマンションギャラリーとしての役割を持っていた「よりみちガーデン」。広場は誰でも立ち寄れるようになっています。そんな広場ではイベントの開催も行われていました。

マンションギャラリーとしての役目を終えたあとには、取り壊されるのが一般的なのですが、「よりみちガーデン」はリニューアルし、金沢区のコミュニティ拠点として生まれ変わります。

「マンションギャラリーをつくるとなったときに、普通のものではなく地域の人に受け入れられるものにするにはどうしようかと考えたときに、まちの人が立ち寄れる広場を併設したものになりました」(山崎さん)

そんなよりみちガーデンで目指していたことは3つ。

「金沢区に住みたいと思っている人が、金沢区での暮らしの魅力に出会える場となること」

「金沢区に住んでいる人が、改めて金沢区の暮らしの魅力に出会える場になること」

「新たな活動の一歩を踏み出したい人が、チャレンジできる場となること」

こんなコンセプトをもとに昨年の3月から行われていたイベントはコーヒースタンド、パンマルシェ、ワークショップ、移動本屋出店など大小さまざま。約100本が稼働したと言います。

まちの人たちにとって、かけがえのない場所になりつつある「よりみちガーデン」。マンションギャラリーとしての役目を終えたあとも何か活用できる方法はないかと小田さんのほうから提案があり、リニューアルに繋がりました。

小田さんは横浜南部の町づくりに携わり、コロナの中で価値観が変わっていく中で、住民のみなさんと一緒にコミュニティを作る仕事をしていらっしゃいます。

小田さん曰く「よりみちガーデンがある金沢区心部は10年、20年先にガラリとまちが変わる可能性がある町だと思っています」。

「でも、それはまだ卵の状態で、これからどんなふうにしていくかみんなで考えていかなければいけませんし、その変わっていく土壌を作っていくのがいまやらなければならないこと」とご自身の役割について語ります。

その上で、新たな「よりみちガーデン」でやりたいことは3つ。

「まちのプレーヤーをはぐくむ」

「まちに活動を生み出す」

「まちの愛着を形成する」

まちを応援してくれる人、盛り上げてくれる人が生まれ、活動が活発化し、自分たちで誇りを思えるようなまちづくりを目指します。

 

リニューアルでは、地域の交流拠点となることのほかに、ホッとする空間としていきたい、と小田さん。

その結果、シェアキッチンにリニューアルすることにたどり着きました。

キッチンのほか、イベントスペース、小商いスペース、キッチンカースペースが設置され、シェアサイクルポートや屋外イベントスペースも作られます。小商いの拠点として。小商いスペースでは少人数のサロンやワークショップにも活用することができます。キッチンの利用がない際はイベントスペースとしての利用も。

そして、「なぜ小商いなのか、ということをよく聞かれる」という小田さん。

それに対しての回答は「まちのはじめの一歩を応援したいから」ときっぱり。

「住んでるだけだと何かから関わったらいいかわからないし、関わってみたいけど、何からしたらよいかわからないという人の背中を後押ししていける施設になれるといいな、と思います」(小田さん)

参加者の方からも質問が飛びます。

「金沢文庫だからこそ感じる街の雰囲気は?」という問いに小田さんは「熱い人が多い気がします」

金沢区でマルシェを行う臼井さんは「あったかくて、人が良いんです。距離感のバランスがすごくいい形になっているということと、いろんな活動をされているプレイヤーの方々が、金沢区の中でいいバランスで協力し合ったり、一体になってやられている、すごいエリアだと思います」。

 

よりみちガーデンの特色のひとつはもともとはマンションギャラリーだということ。マンションギャラリーだったからこそのエピソードはあるのでしょうか。

山崎さんは、「マンションギャラリーに来る方は金沢区に住もうと思っている人。モデルルームを見たあと、外で出店されているキッチンカーの人から金沢文庫の良さを教えてもらっている、というのはよりみちガーデンならではかもしれませんね」と意外な相乗効果を明かします。

 

そして、「よりみちガーデン」のもともとの役割は地域外から人を呼ぶことでした。しかし、これからはどのようにアプローチしていくのか、という質問について小田さんが回答。

「シェアキッチンという機能に惹かれてくる人もいると思います。用途を絞らない形で小商いをしているので、よりみちガーデンでできるコミュニティというものにすごく価値があると思うんです。それに魅力を感じて、地域外からも来てくれるんじゃないかな、と。

また、長い目で見るとよりみちガーデンで育った人が、金沢区の別の場所でお店を開いてくれることが増えていくと、金沢区自体の魅力があがっていくと思うので、それをきっかけに金沢区に住んでみようかという人もだんだん増えていくのかな、と思います」

 

■暮らしの中でまちを盛り上げる

ふたつめのトークセッションのテーマは「自分の暮らしを起点に考える、まちの拠点の設計と運営」。永田さんが語り手です。 

建築家として活躍されていらっしゃる永田さん。「実は独立して最初の仕事はマンションギャラリーで模型を作ることだったんです」と当時作られたジオラマを紹介し、会場を沸かせます。

永田さんは建築家として、「自分が暮らすまちに、果たしてどれだけ深く関われているのだろうか」という自問をしていたのだそう。そこで、地域の住民として、まちのためにやれることがないのかと考え、活動を展開しています。

そこで始めたことが藤棚商店街にある「藤棚デパートメント」。

地域の担い手を育てる日替わりカフェや料理教室が開けるシェアキッチンなど、気軽に相談ができる設計事務所が併設した地域拠点です。

地元の老舗店とコラボした料理教室や、新たに地域に出店した店舗との協同開発、小学校や地域活動センターなど地域施設とコラボなどを行っています。

藤棚商店街があるのは野毛山エリア。

地域の拠点になるような場所があったり、公共施設や公園がいくつもあります。地図で見ると、野毛山エリアはみなとみらいや伊勢崎モールなどといった主要なポイントに囲まれており、いろんな地域とアクセスしやすい場所になっているのです。その場所に住んでいるからこそ、繋ぐ役割を果たせるのではないかと考えたという永田さん。

また、建築家だからこそ、建物を作るだけではなく、実際に自分がそこに暮らし、人を呼んでつなげていくことができるな、という発想は目からウロコ。

空きビルなど、まちの資源を発掘し、その場所で暮らしながら活動をしていく。人とつながり、場所を作って、まちを一緒に盛り上げていくということをしています。

 山崎さんからは、「この拠点が広がることで町が変わった実感はありますか?」という質問が。

「単純に知り合う人や店が増えたというのはあります。自分の暮らしの生活圏が広げられるようになりました。最初は商店街の中だけだったけど、違う場所にも行くようになりました。あとは気軽に人に頼み事をできるようになりしまたね。拠点ごとにご近所感がでるようになった気がします」

また、「コミュニケーション部分ではどのようなことに気をつけているのか」という質問が。

「暮らしている地域にちゃんと関わる。藤棚デパートメントもいきなり作ったんじゃなくて、もともと住民としていて、地域の中で買い物したりお付き合いをしたり。ちゃんと暮らしているところのことを考えると、当事者になれるし町に溶け込めるんですよね。自分の周りが豊かになったら幸せだし、そういう感覚は大事にしたほうがいいんじゃないかな、と思います」(永田さん)

 

そして、地域に新しく作ってみたいことがあるかという質問には、少し考える表情を浮かべながら、「宿泊する場所は欲しいですね」と永田さん。

「外から関わりたいっていう人が日帰りじゃなくて2~3泊ぐらいして、まちの時間の流れを知ってもらうのは大事ですよね。何もしない時間があるからこそ、まちを知ることができるのでそういう時間は必要だな、と思います」(永田さん)

 

■マルシェでよりリアルなコミュニケーションを

最後のトークセッションは臼井さんによる「まちと人がつながる地域の場づくりと、心地いい暮らし」です。

「パンとコーヒーマルシェ」として、横浜市内の聞く所でマルシェの企画運営、コーディネイト、デザインを行っている臼井さん。

地域や場所の魅力、作り手の魅力を伝えています。

「よりみちガーデン」でも、「よりみちコーヒースタンド+パンマルシェ」の企画主催を行っていらっしゃいます。

「場所の空気感に合わせて出店者のコーディネイトをしていて、地域に合わせてお店にお声がけをしています」(臼井さん)

人通りが多い場所よりも、なかなか人が来ないような場所でマルシェを開催することも多く、イベントを通じてその場所に賑わいをつくっています。

臼井さんが大学院生として通っていたことから始まる金沢区とのつながり。京急沿線の黄金町マルシェには、金沢区のお店も度々出店いただいていたのだそう。

よりみちガーデンでの最初のマルシェは「よりみちコーヒースタンド」。最初の印象は「意外と人通りがなさそう」(臼井さん)。

向かい側に区役所があるものの、大きい道路を挟んでおり、横断歩道も目の前にないので、「これは結構難しい場所かもしれないという印象はありました」。屋外でのマルシェの開催経験は多くなかったということですが、ドリンクを中心としたキッチンカーに来てもらうなど、屋外ならではの空間に。

定期的に出店していたキッチンカーの人からは、常連の方がたくさんついてくれたという声が。また、お子さんと公園に行った帰りに立ち寄るお客様も多く、お子さんの成長を見守るような気持ちだったと言います。

「地域の中で楽しい場所という印象がついたのかな、と思います」(臼井さん)

また、パンマルシェも大盛況! 金沢区のパン屋さんや、近隣のお店が出店し、それぞれのこだわりのパンを販売しました。夏場は野菜やハーブをテーマにしたマルシェも開催されました。

「今後はもう少し外に向けて、遠くからよりみちガーデンに足を運んでもらえるようなイベントをうちたいと思っています」(臼井さん)

そして、「マルシェの魅力はリアルなコミュニケーション」という臼井さん。

その日1日のことですが、数時間で出店者もお客さんも体験を共有している感じがあると言います。おいしいものが食べられるだけでなく、つながりで豊かになっていく側面があるのです。

 

リニューアル後のよりみちガーデンでは運営者同士、出展者同士で協力してチャレンジしていくことも多いはず。藤棚アパートメントでは出展者同士の交流はあるのでしょうか。

「3年目ぐらいから如実に増えてきています。枠が埋まり始めて、場所がないとなったときに、一緒にやろう、と出展者さん同士が組むようになり、自然と仲良くなっていったんですよね。そのうちに、小さなマルシェをやってみたり。みんなが集まることで場は盛り上がるし、負担は減るので横の繋がりは大事だな、と思いましたね」(永田さん)

繋がれる土壌があるからこそ育まれる環境なのかもしれません。よりみちガーデンも、きっとそんな場所へと育っていくはず。

リニューアルしたよりみちガーデンは12月上旬にグランドオープン予定です。どのように交流が生まれ、まちが育まれていくのか、楽しみですね。

 

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