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Aozora factory

2023.01.31

「みんなで面白いことをやって、仲間を増やしていきたい」Aozora factory代表・本多竜太さんが考える「LINKAI横浜金沢」発のまちづくり

NPO法人Aozora factory 代表理事本多竜太

金沢区

横浜市金沢区はベッドタウンであり、横浜・八景島シーパラダイスなどの人気スポットもあるエリア。そのシーサイドラインを挟んで海側には「LINKAI横浜金沢」(横浜市金沢臨海部産業団地)と呼ばれる産業団地が広がっているのをご存じでしょうか。

「LINKAI横浜金沢」に属する企業数は約1300社。業種も金属やブラスチック、食品など多種多様。全国でもなかなか類を見ないものほどの規模感の産業団地なのです。

そんな「LINKAI横浜金沢」について「さまざまな可能性を秘めている場所」と語るのは、同エリアで活動するNPO法人Aozora factoryの代表理事の本多竜太さんです。

 

認知されていないエリアに人を呼ぶために

「LINKAI横浜金沢」は、昭和42(1967)年に横浜市による埋め立て事業により生まれたエリアです。

遡ること約40年前。町に工場を持っていた企業は、規制が厳しくなり増改築ができなくなりつつあった時期でした。そこで行政は金沢区のこのエリアに埋め立て地を作り、横浜市内のさまざまな企業を誘致。企業同士がつながることができる場所ということもあり、多くの企業が移転してきたそうです。

本多さんが勤めていた印刷会社も16年前に、増改築したいという事情から「LINKAI横浜金沢」に引っ越してきました。

以前、会社があったのは野毛山動物園の近く。終わった後はみんなで飲みに行き、お昼を食べる場所にも困りませんでした。しかし、「LINKAI横浜金沢」は特区なので、飲食店も住居もありません。

そもそも「LINKAI横浜金沢」という愛称が付けられたのは2017年のこと。それまでには愛称もなく「横浜・八景島シーパラダイスの近く、と言うと、『ああ、あの辺りね』ってやっと分かってもらえるような状態。地域の名前が知られていないし、集客もありませんでした」と本多さんは言います。

このエリアでは毎年、年に1回お祭りが行われます。ただ、集客が年々減っていることもあり、どうにかして人を集められないかと本多さんに声がかかったのです。

そこでまず、2015年に「最多人数で行うだるまさんが転んだ」のギネス記録(当時)に挑むイベントを開催し、話題を集めました。翌年もイベントを任されることになりますが、「せっかくの機会だからこの工業地帯をもっと知ってもらえるようなことをやろう」と本多さんは考えたのです。

そこで実施したのが、ものづくり体験ができる親子向けのワークショップでした。2016年に、「LINKAI横浜金沢」の魅力発信と価値創造を目指し、産学官が共同してAozora factory立ち上げ、イベントを開催。中華鍋をつくっている会社さんや、南京錠の会社さんなど「LINKAI横浜金沢」に属する企業を知ってもらうために、子ども向けのイベントを横浜市立大学の学生と一緒に考えたそうです。

 

地域に知り合いが増えればそれだけで楽しい

最初にイベントを始めたころの来場者は500人。コロナ禍でも万全の感染対策を行い、イベントを続け、最新の11月のイベントでは19の企業がブースを出し、開催時間4時間の間に1,600人が来場したと言います。

「メディアでも取り上げられるようになってから、多くの方にイベントを知ってもらえている実感がありましたね。コロナ禍でおうちでものづくり体験ができるキットを配布したのですが、学校が閉鎖している期間にお子さんたちに楽しんでいただけて、リアルなイベントが開催されたら行こうと思ってもらえたのかもしれません」(本多さん)

Aozora factoryがスタートしてから約6年。イベントを重ねている中で、変化を感じることもあると言います。

「最初は、大学生の方が主体性を持っていて、企業側は様子見している、という状態でしたが、少しずつそれが変わってきて、企業もイベントに出展したいと言ってくれるようになりました。出展企業同士で横のつながりが生まれてくるのもすごく面白いですね。新しく企業を知って、そこでまた企業同士で新しいコラボが生まれたりしています。さらに学生が地域の企業のことを知る機会にもなっていて、実際に就職先として選ぶ学生もいます」(本多さん)

しかし、ここまで至るまでには「周囲の反発もあった」と本多さん。新しいことを始めるには、パワーも必要です。そんな活動の原動力になっているものは「古い固定概念を壊してやろうという反骨精神」と本多さんは言います。

「どこかに仲間がいるんじゃないか、という思いですよね。僕と同年代や若い世代に、事業継承も含めて、地域をどうにかしないといけないんじゃないか、という気持ちがある人はいるはず。そんな仲間を探しているんです」

「多くの企業があり、そこで働いている人がいるのだから、横のつながりをもっと作っていきたい」と本多さん。そしてそれは自分1人ではなく、まちの人たちと作っていきたいという思いがあるのです。

「単純に知り合いが増えるとそれだけでも生きていて楽しいじゃないですか。会社に行って働いて帰るだけよりも、ちょっとした面白さがある。そんな小さいことから、大きな広がりを作っていける気があります」(本多さん)

 

面白いことを続けて、地域を盛り上げたい

「活動の途中までは『この地域の魅力を発信しよう』と一方的にやっていたんですが、この2~3年で『一方通行じゃいけないな』と気づいたんです」という本多さん。

事実、横浜市立大学だけではなく関東学院大学も活動に参加し、そこに地域コミュニティの人たちも加わり、そこで相互関係が生まれています。そして、地域の人たちとつながっていく中で視野が広がり、新たな取り組みも。

「海の公園では、水中ドローンで海の中を探検する、ということを学生対象にしてやっています。いわゆる工業と自分が住んでいる地域の海をベースにして、リアルタイムでライブ配信するので、みなさん面白がってくれていますね」(本多さん)

改めてまちの現状とその価値を見つめ直させてくれる取り組みは、まちをどうやって生かすか、という発想につながるのかもしれません。

最後に、Aozora Factoryが今後チャレンジしたいことを伺いました。

「今、地域の企業を紹介する冊子作りをすすめています。産学官でやっているんですけど、取材するのは学生、配布するのも大学なんです。初めての取り組みですが、そういう活動も面白いですね。あとは、拠点を作りたいと思っています。地域の志の高い方が集まって何かを創出できるような場所があったらいいですよね」

本多さんとしては「面白いことをやってくれる人がどんどん増えたらいい」という気持ちがあると言います。

「僕がやっていることを若い人がやってくれたら面白いですね。世代交代って大事。いろんな人が面白いことをやって地域に刺激を与えていってほしいですね」

面白い人が集まる場所には面白い人がやってくる。そうすれば、街ももっと面白くなる。そのために本多さんはこれからも「LINKAI横浜金沢」から活動を続けていきます。

本多竜太さん

NPO法人Aozora factory 代表理事

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