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アサバアートスクエア

2023.02.22

「みんなが“活躍できる場”を増やしたい」アサバアートスクエア主宰&金沢文庫芸術祭実行委員長・浅葉弾さん

アサバアートスクエア主宰&金沢文庫芸術祭実行委員長浅葉弾

金沢文庫

金沢文庫駅から徒歩で10分弱。北条実時が創建した称名寺のすぐそばに「アサバアートスクエア」はあります。

閑静な住宅街の中にあるのに、そこだけ異空間のようなアサバアートスクエア。ベジカフェやレッスン、ワークショップなど、アートや民族文化などにまつわるイベントや教室が開かれています。

そんなアサバアートスクエアを主宰し、「子どもとアート」をテーマに活動しているのが、浅葉弾さんです。

浅葉さんのメインの活動が、アサバアートスクエア内で開いている「こどもデザイン教室」です。もともと金沢文庫で生まれ育った浅葉さん。社会人となり、都内でクリエイティブディレクターとして働いていましたが、2014年に浅葉さんの母・和子さんが開いていた「こどもデザイン教室」を受け継ぐことに。教室では、子どもたちにデッサンなどのテクニックだけでなく、絵画、工作、衣装制作などアートを通じたさまざまなチャレンジを体験させています。

浅葉さんの活動は教室だけにとどまりません。ワークショップユニット「虹のあそび隊」の隊長として、地域の幼稚園や保育園、小学校のほか、商業施設やイベントなどでもアートあそびを体験できるワークショップを展開しています。

子どもたちとアート活動を行うことについて「子どもたちが新しいことにチャレンジしてかたちにできたとき、子どもたち自身が手応えを感じて、それを自分の引き出しにしていく瞬間がある。その瞬間に立ち会うと、僕たちもゾクゾクする」と浅葉さん。「不確実な時代だからこそ、自分たちでチャレンジして切り開く力を身につけてほしいんです。僕はそれをアートでしか導けないけど、アートで得た経験をさまざまな場面で活かしてほしいと思っています」

 

1999年から開催する金沢文庫芸術祭。昨年は大雨の中での開催に

浅葉さんが母・和子さんから受け継いだのは、こどもデザイン教室だけではありません。1999年に和子さんらが立ち上げた「金沢文庫芸術祭」もそのひとつ。15年ほど前に和子さんからバトンを受け継いで、現在は浅葉さんが実行委員長を務めています。

金沢文庫芸術祭のテーマは「こどもの未来は地球の未来」。海の公園で開催されるオープニングフェスティバルでは、ステージでのパフォーマンスやワークショップが繰り広げられるほか、アートブースやフードスペースも多数出展。また、金沢区内のカフェやギャラリーなどでさまざまな催しものを行うアートラリーも約1カ月半にわたって展開します。

コロナ禍などで中断があったものの、これまでに22回開催してきた金沢文庫芸術祭。毎年2〜3万人が来場し、今では地域でのビッグイベントのひとつとして定着しています。

金沢文庫芸術祭について「絵を描いている人だけでなく、何かを作っている人とか踊っている人、歌っている人が日頃の成果を発揮するお披露目の場としても活用してほしい」と浅葉さんは言います。

「誰も感動しなかったらタダのゴミだけど、誰か一人でも感動していればそれはアート。作者自身が自分だけでも感動していれば、それはれっきとしたアートになるんです。だからみんなアートを楽しめるし、アーティストとしても活躍できる。金沢文庫芸術祭を通じて、それを皆さんに知ってもらいたいんです」

金沢文庫芸術祭に関わる実行委員は30人ほどいますが、すべてボランティアなのだとか。「バラバラのメンバーが集まって一つのことをやり遂げるっていう感動も、まさにアートだなって毎回思いますね」と浅葉さんは言います。

2年ぶりの開催となった昨年。久々の開催を多くの人が心待ちにしていたものの、オープニングフェスティバルはあいにくの大雨に見舞われました。当初は中止する方向で考えていたそうですが、実行委員の熱意に押されて開催することに。来場者はいつもの5分の1くらいの人数でしたが「雨の中やってくれてありがとう」という声も寄せられたそうです。

しかし、雨天での開催を決行したことについて「反省している」と浅葉さん。「子どもが風邪をひくかもしれなかったし、足を滑らせてケガをする恐れもあった。出展者の作品が汚れる可能性もあった。そういうリスクを考えるとやっぱり中止にすべきだった」と言います。

ただ、こういう経験も成長の種だと浅葉さんは考えています。「金沢文庫芸術祭は出展者や出演者だけでなく、実行委員の僕らも成長できるという相乗効果がある。だから、続けているんだと思います」

今後は虹のあそび隊ともコラボして、地元の幼稚園や保育園の子どもたちと一緒に会場に飾るような巨大アートをつくるという構想もあるのだとか。

「金沢文庫芸術祭の主役はあくまでも子どもたち。子どもたちの未来のために、少しでも可能性の幅を広げてあげたいですね」

 

活動できる場は多い。もっと“活躍”できる場を増やしていきたい

一度東京に出たものの、地元に戻り、現在も金沢文庫を拠点に活動を続けている理由について「ここの環境がやっぱり最高なんですよ」と浅葉さんは言います。

「海があり、山があり、商業施設もある。ちょっと田舎寄りなエリアだけど、バランスがとてもいいから住みやすい。公園も多いし、自然も多いし、動物園や水族館もあるから、子どもたちが育つ環境としてもいいですよね」

他の地域から来た人たちを受け入れないというほど閉鎖的でもなく、むしろ積極的に受け入れている。だからといって新興住宅地というわけでもなく、歴史のある地域でもある。そういった部分も金沢区エリアの魅力だと語ります。

現在は、このエリアを中心に地域を巻き込んで活動する浅葉さんですが、金沢文庫に戻ってきた当初は「そこまで地元のために活動しようと思ってはいなかった」と言います。

「結果的に地域全体を巻き込むような活動になってしまっていますが、最初からそこまでは考えていませんでした。ただ、目の前の子どもたちや仲間と一緒に楽しみたいという気持ちで活動しています」

浅葉さんだけでなく、金沢区エリアには地域で活動を行っている人がたくさんいます。しかも、もともと地元に住んでいた方よりも、新たに移り住んだ人の方が積極的にコミュニティ活動しているのだとか。

「このエリアをよりよい場所にしようと頑張っている人はたくさんいます。ただ、正直、住民がそういった活動を求めているかどうかはわからないんです。でも、そうやって頑張っている人たちがいるっていうことに僕はワクワクするんですよね。自分自身はそこまで地域のために貢献しようという意識が強い方だと思っていないのですが、自分の活動がみんなが喜んだり、楽しんだりすることに貢献できているんだったら、それはそれで嬉しいですね」

浅葉さんはこれからの活動について「みんなが活躍できる場を増やしたい」と思いを語ります。「金沢区エリアは活動できる場はたくさんあるが、活躍できる場は意外と少ないんです。アサバアートスクエアも金沢文庫芸術祭も活躍できる場。そういった場所で自分たちの日頃の成果を誰かに披露して活躍することで、また次のステージにすすめる。その経験を積み重ねることで、成長することができると思うんです。そういった場をどんどん作っていきたいですね」

浅葉弾さん

アサバアートスクエア主宰&金沢文庫芸術祭実行委員長

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