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かなざわ人物語

地域拠点

2021.03.01

「食」がコンセプトのアパートメント「八景市場」の仕掛け人。市場のような役割を目指ざす

八景市場プロジェクト平野健太郎さん

金沢区釜利谷東

金沢区釜利谷東の小泉住宅にあるコンセプトアパートメント「八景市場」。アトリエや工房などに使えるスペースを完備し、入居者は創作活動を行いながら地元の方と交流を深めることができます。

手がけているのは、フードコミュニケーターの平野健太郎さん。八景市場を拠点に、金沢区のまちづくりを行っています。

空室問題をきっかけに、コンセプトアパートメントを考案

八景市場を始めたきっかけは、父親が経営する旧アパートの入居者が見つからず、空室が急増していたこと。「近隣は大学も多いですが、やはり人口が減少している中で従来の賃貸経営を行うのは限界があると感じたんです」と平野さん。

「他とは違った切り口が必要」と思い、「食」をコンセプトにしたアパートメントを考案。入居者が食を通じて地域の交流を深められるようなスペースとして、2019年2月に生まれ変わりました

「もともと、学生時代は国内外のまちづくりに携わるボランティアをしていたんです。社会人になってからは食にまつわるイベントも企画していたので、これまでの自分の活動が集約されたのが『八景市場』なのかもしれません。食事は周りとの会話を弾ませる働きもありますよね。そこで、八景市場では食にまつわるイベントを定期的に行っています」

八景市場の大きな特徴は、キッチン付きオープンスペース(ラウンジ)が併設されていること。入居者同士だけでなく、近隣の方ともコミュニケーションを深められるよう、ワークショップなどのイベントやマーケットが開催されています。

実は、八景市場がある場所には、かつて本物の市場が存在していたそう。戦後間もないころ、「釜利谷日用品市場」として食料や衣類、雑貨などが売られていました。しかし、近隣の開発が進み、1987年に市場が閉鎖されることに。

「当時の市場のように、アパートが交流の場になってほしいという気持ちを込めて『八景市場』と名前を付けました」

居住棟は全7戸。1階はアトリエやスタジオ、工房に利用できるため、クリエイターや建築家などの入居者が多いそう。

飲食店営業の許可付きの貸しスペースも完備され、子育て世代の交流イベントなど地域づくりの取り組みにも活用されています

地元に誇りが持てるようなまちにしたい

平野さんの活動は、コンセプトアパートメントの運営に終わりません。現在は金沢区の地域団体や住民と協力しながら、さまざまなまちづくりの施策を行っています。

たとえば、地元で作られた唐辛子と8種類の素材を使った「金澤八味」の商品開発。金沢区を拠点にした「SDGs横浜金澤リビングラボ」とともに、地元の資源を生かした地域産品づくりに取り組んでいます。

「八景市場を運営していくうちに、『地域のためにできることをしたい』という思いがどんどん大きくなっていきました。金沢区で生まれ育ち、この場所に愛着もあります。だからこそ『金沢区に住んでいる』というのを誇りに思ってほしい。八景市場も入居者だけでなく、近隣の方に喜んでもらえるようなスペースにしていきたいですね。そのためにはどんなことができるのか、いろいろなやり方を模索しながら一歩ずつ進んでいけたらと思います」

 

◆八景市場
https://hakkei-ichiba.com/

京急線金沢文庫駅より徒歩10分程度、スーパーや店舗が立ち並ぶ大通りから一歩入った、 閑静な住宅地に八景市場はあります。山と海のちょうど間にある、魅力的な立地です。

平野健太郎さんさん

八景市場プロジェクト

生まれも育ちも横浜市金沢区。学生時代国際ワークキャンプというボランティア活動を通じ,地域内外のコミュニケーションを軸に日本全国のいろいろなまちづくりに関わる。卒業後は水道技術者として働くかたわら、「食」をテーマにしたさまざまなイベントに携わる。2019年2月からアパートメント「八景市場」をオープンし、かつて同じ土地で街の中心として機能した「釜利谷日用品市場」のリデザインに親子2代で挑む。

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