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かなざわ人物語

まごころの会

2021.12.20

地域の「困った!」を見つけ、解決に導く人 ー 一般社団法人「まごころの会」理 事長、高橋のりみさんー

一般社団法人「まごころの会」理事長・横浜市会議員高橋のりみ

横浜市金沢区

 

生活のなかで何か困ったことがあったとき。あなたならどうしますか?

「面倒だからいいや」「こういうルールなんだから仕方ない、あきらめよう」と考えてしまい、改善のために役所に相談したり、自ら行動を起こすことって、そうないと思うんです。

けれど今回お話をうかがった、高橋のりみさんは違いました。

自ら課題を発見し、資金を集め、率先して改善のために動き続けるひとが、金沢区にはいたのです。

「自分の頭の中で想像できたことは、大抵のことはなんでも実現できると思っています。だから困りごとがあったら、いつでも相談してほしいし、私にできることなら何でもしたい、って思うんです」

高橋さんは自らを「市民活動家」であると称します。市民活動家としての高橋さんが、人の前に立ち、引っ張り、動き続けるようになったきっかけや活動内容について、うかがいました。

金沢まごころの会が管理していたミカン園。時期がくれば収穫をみんなでおこなうのだそう。

高橋さんは現職の横浜市会議員として活動する傍ら、一般社団法人「まごころの会」の理事長も勤めていらっしゃいます。

10年ほど前までは子育てをする、普通のママだった高橋さんが、地域のために動きだすきっかけとなった出来事があったそうです。

「原体験は『公園デビューの失敗』かもしれません(笑)。あまりなじめなくてすごく苦しい思いをしました。そんなとき、保健所が母親学級のようなものをつくってくださって、よく参加していたんです。

仲の良い友達も少しずつできて、みんなでサークルをつくったりしていたんですよね。サークルは年に1万円の補助金が出るんですが、そのたった1万円のために、予算書や規約などをつくって頑張っていたんですよ」

そのサークルでの活動実績が認められ、しばらくすると横浜市の空き店舗を活用した、子育て支援をやらないかと声を掛けられたのだそう。そうして立ち上げた「親と子のつどいの広場」は、現在も子育てに関する相談の実施や、子育て関連の情報交換の場として活動は継続しています。

こうした活動の広がりをきっかけに、他にも補助金を受けながら街に役立つ活動をいくつも始めていった、高橋さん。ふと「この補助金ってどこから出ているのだろう?」、「補助金が受けられる事業は、どのようにして選ばれているのだろう?」と気になり、市会議員として活動のフィールドを変えていったのです。

金沢まごころの会のメンバーと、ゴミ屋敷の片付けをする高橋さん。

市会議員になってすぐに立ち上げたのが、「まごころの会」でした。活動は主に、行政ではなかなか手が届かないような地域の「困った」を、みんなで助け合いながら解決する、という団体です。また予算も基本的には自分たちで集めた支援金でまかなっているといいます。

「市の予算には限りがありますし、役所を通すことで解決までに時間がかかってしまうこともあります。まごころの会ではできるだけ市の予算に頼らず、自分たちの力でできることは、自分たちでやりたいと思って立ち上げたんです」

最近では台風で倒壊した神社の護岸修復作業のために、支援金を募るためのWebサイトを開設したり、ゴミ屋敷の掃除を請け負ったりするなど、活動の幅は多岐に渡ります。高橋さんが見つけてくる課題は、いずれも行政では優先度をもって解決に時間を割けない、こぼれ落ちてしまいそうな人々の困りごとばかり。

市会議員や理事長といった役職に就いてはいるものの、「一番自分が動いている」と自負する高橋さん。その原動力ってどこから生まれているんでしょう?

「若いころから、問題があるとすぐに動き出さないと気が済まないタイプではあったんですよね。でも問題があるからこそ、解決できることがある。多分『問題がある状態』が好きなんじゃないかな」

(金沢八景駅前の弁天島。破壊されている護岸を修復するために、クラウドファンディングを立ち上げた)

まごころの会での活動を、市政に活かすこともあるという高橋さん。たとえば金沢八景駅下にあるトンネルを取り壊す案が出た際、市民からは反対の声が多く出たのだそう。

でもただ「工事反対!」と声を上げるのは簡単です。高橋さんは自らまごころの会のメンバーと一緒に、交通量調査を行ったのだそう。実際にトンネルでは多くの自転車での通行者がいることがわかり、危険な踏切へ移送するよりは、トンネルを利用したほうが安全だと根拠を明示し、維持を取り付けるための要望書を提出したのだといいます。

「地域の課題に対して、自ら調査し、どういった解決策がいいのかを模索する。そして議会との橋渡しになること。それが、自分の役割なのかな、と思うんです」

横浜こどもホスピス建設現場を視察する、高橋さん(写真左)

今後はこども向けのホスピスの立ち上げも控えているという高橋さん。

多岐にわたって活動を続ける高橋さんに、横浜市のこと、金沢区のことについて聞いてみました。

「横浜の人って、課題を見つけると、同じ課題をもった人たちでいつのまにかグループをつくり、解決するために活動を始める傾向があると思うんですよね。すごく市民活動への意識が高い地域だなと思います。

そして金沢区は、歴史があって、文化があって、それからとにかく人がいい。

よく漁師のおじさんたちにも可愛がってもらっているんですけど、みんなわたしの顔を見ると地域の文句ばかり言う人もいるんです(笑)。でもそうした会話の中に、課題を見つけるヒントがあると思っています。だからこれからも、住民の方との対話は、できるだけ続けていきたいですね」

最近では大学生と一緒に、FMラジオ局開設のための活動を始めたという高橋さん。ほかにもいつかは地元・徳之島の学生を迎え入れる下宿屋をやりたいなど、夢は広がるばかり。

「私が得意なのは継続するよりも、まずは立ち上げて始めること。昔は継続することができず中途半端な自分が嫌いで、落ち込むことばかりでした。でも始める人がいないと継続することはできませんもんね。
困りごとを解決するために、まずは始めること、動き出すこと。このために私は活動し続けていきたいんです」

どうしても解決したい地域の課題があるとき、でもどう進みだしたらいいのか分からないとき……。そんなときは、高橋さんのいる「まごころの会」の扉を開けてみてはいかがでしょう。きっと何か解決の糸口が見つけられるかもしれません。

高橋のりみさん

一般社団法人「まごころの会」理事長・横浜市会議員

鹿児島県徳之島出身。
一般社団法人「まごころの会」理事長。横浜市会議員。
金沢区内の安全安心まちづくりのために尽力している。商店会活性化や、金沢区全体の賑わい作りのために商店会や町内会の人達と意見交換、議論をし、地区活性化のためにも動いている。

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