よりみちガーデンとは?

かなざわ探訪

和菓子

2022.03.28

正直に、嘘のない店づくり。地域から愛される創業60年の御菓子処「菊月」

御菓子処「菊月」

金沢区寺前

今回訪れたのは、金沢文庫駅から徒歩8分ほどの場所にある、御菓子処「菊月」。創業60年以上で、現在の店主である花博一(はな・ひろかず)さんが38歳のときに受け継ぎ、はや22年。
親子三代で続けてきた、歴史ある和菓子屋です。

約束の時間から少し遅れて「お待たせしました~!」と大荷物を抱えていらっしゃった、花さん。豪快で、快活な男性そのもの!地元の人からは「タオルおやじ」の愛称で親しまれているそうで、取材当日もトレードマークのタオルをしっかり頭に巻かれていました。

横浜ベイスターズをこよなく愛する野球好きな一面も持つ花さんに、菊月のおすすめの御菓子長年お店をやっていく上で大切にしていることなどについて伺いました。

菊月は金沢文庫駅から少し離れた住宅街の中の、大きな通り沿いにあります。訪れたのが祝日の夕方だったため、売り切れになる商品も出ていたほど。店内にはショーケースの中にたくさんの御菓子が並んでいます。

中でも人気なのは、横浜金沢ブランド品にも認定されている「かねさわ一番ポテト」。紅あずまを使用したスイートポテトで、ごろっとしたお芋の食感と、発酵バターの優しい甘みを感じることができます。

ほかにも抹茶クリームがたっぷり入った「金沢文庫の生ドラ焼き」や、苺大福。最近ではゼリーのような食感がさっぱりとして美味しい、「かねさわゼリー」も新たな試みとして始められたのだそう。

それから早く口に入れないと、どろりと溶けてしまいそうなほど柔らかな、みたらし団子!

添加物が一切入っていないからこそ、お餅の柔らかさが実現できるのだと聞いて、驚きました
その分賞味期限が短いことが難点。これは直接お店に来て買わなければ、味わえない美味しさです。

「ありがたいことに、『うちの子は、菊月さんのお菓子じゃないと食べてくれないんです』なんて言ってくれる人もいるんですよ。コンビニとかで売っているものとは、まったく違うと思うので、その違いを幼い子が分かってくれてるっていうのは、うれしいですよね」

さらに贈答用のお菓子のわせや、赤飯、一餅なども並べられています。ときには近学校行事のときに大文をいただくこともあるのだそう。

お茶の間で食べる日常のお菓子から、ハレの日のお菓子まで。幅広い商品を用意することで、地域の人たちから頼りにされる存在となっていることが伺えます。

そんな長年お店をやってきた花さんにとって、大切にしていることを聞いてみました。

「嘘をつかない、正直でいること、かな。例えば賞味期限が近い商品があったときに、黙ってそのまま店に並べておいたり、ただサービス品なので割引です、なんてしない。ちゃんと『賞味が近いから、よかったら割引するのでいかがですか』と聞くようにしてる。

毎日17時には日持ちしない商品を半額にしちゃうんです。商品を捨ててしまうくらいなら、安くても持って帰ってくださる方がいたほうがいいかなって」

さらにメインの商品は、多少売れ残りのリスクがあったとしても、できるだけショーケースに並べ続けるようにしているのだそう。「その商品を目当てに来てくださる方もいるからね。ないと悲しいでしょう」と、花さんは笑います。

厨房には年季の入った調理道具や、機械がズラリ

最近ではお店に立つことも少なく、裏方に徹することのほうが多くなったと花さん。けれど子どもの声が聞こえてきたらできるだけ、接客スペースの方に顔を出すようにしているのだといいます。

「子どもを通じて親御さんによく絡んだりもするんですよ。なんていうか、信用して買いに来てもらえたらいいなって。あそこのお店なら、人も信用できるし、味もいいしって。あそこなら大丈夫でしょうって思ってもらえる店になれればいいよね」

菊月は自分の代で終わりにしようと考えている、と花さん。早く新型コロナの影響が落ち着いて、当たり前の日常に戻ってほしい、気の置けない仲間と飲んでバカ騒ぎをしたい、と笑います。

花さんの話を聞いていると、きっとそうは言っても、地域の人の笑顔と「美味しかった!」の一言が、花さんの原動力になっているような気がしてなりません。花さんは和菓子作りを通じて、地域との繋がりを持っているのだと感じます。

自分にも、周りにも正直で自然体で動く、花さん。そんな花さんとスタッフの皆さんが、地域の人のために毎日丁寧に作り続ける、菊月の優しくて素朴な和菓子。どちらもぜひ堪能しに、足を運んでみてください。

(帰り際、袋いっぱいに和菓子を詰めて持ち帰らせてくださった花さん。取材に行ったはずなのに、なんだか私が元気をたくさんもらってしまいました!花さん、ごちそうさまでした!)

 

御菓子処「菊月」

金沢文庫駅から徒歩8分ほどの場所にある、御菓子処「菊月」。
創業60年以上で、現在の店主である花博一(はな・ひろかず)さんが38歳のときに受け継ぎ、はや22年。
親子三代で続けてきた、歴史ある和菓子屋。

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