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かなざわ探訪

双実堂コーヒー

2021.07.26

コーヒー初心者から通まで、老若男女関係なく誰でも入りやすい「双実堂コーヒー」。地域の人を魅了するのは、おいしい豆と、マスターのキャラクター

双実堂コーヒー

横浜市金沢区

 

金沢文庫駅から徒歩3〜4分ほどのところにある「双実堂コーヒー」。店内に一歩踏み入れると、コーヒーの香りが鼻をくすぐります。オーナー・玉田浩之さん(53)が4年前にオープンしたお店です。上質でこだわりのコーヒー豆を求めて、近隣住民の方々はもちろん、いろんな地域からお客様が訪れます。ただコーヒー豆を販売するだけではなく、「せっかくいらっしたのですからコーヒーを体験していただきたい」と玉田さんは話します。

コーヒーはどれも同じじゃない

お店には自家焙煎したグアテマラ、ブラジルなどのシングルオリジンの豆12種類、オリジナルブレンド1種類。ブレンドが1種類なのは、「生産地の風味特性をストレートに味わってもらい、生産地によって味が全く異なることを感じて欲しい」という思いから。実際、お店にはシングルオリジンが好きなお客様が多く、そのお客様の感想を聞き、それを次の焙煎や買い付けにフィードバックすることを大事にしているそうです。

「その日の気分やシチュエーションによって飲むコーヒーを選べるようになればコーヒーの楽しみの幅は広がります。例えば、目覚めの1杯はフルーティーな香りで軽やかなエチオピア、食後の1杯はほどよいコクと苦味がありながらも後味がすっきりしているグアテマラ、仕事や家事が終わった時はミルクを入れてまったりするとか。いつも同じコーヒーを飲むことも素晴らしいですが、その時々で豆や淹れ方を変えることも楽しいですよ」

「ただコーヒー豆を販売するだけではなく、コーヒー豆を体験して感じるお店にしたい」と語る玉田さん。一つひとつのコーヒー豆の説明や淹れ方などはもちろん、実際コーヒーを飲んで 体験 することもできます。新型コロナの影響で自粛していますが“”、コーヒーの淹れ方教室なども状況をみて今後再開していきたいそうです。

「コーヒーをおいしく淹れるためには、豆の量、お湯の量、粉の粗さ、お湯の温度、お湯を注ぐスピードなどが大事。数値化することが大事とはいいませんが、しっかり計りながら淹れると味が安定します」

ただ、コーヒー豆の焙煎では、玉田さん自身の経験に頼っているのだとか。コーヒー豆の焙煎は、焙煎機の操作そのものは簡単ですが、豆の種類、その日の天候などで火力、排気、豆の投入量を微調整するので経験がとても大事。焙煎中も焙煎機のモニターだけではなく、豆の音、豆の表情、色の変化、香りの変化を常に追って五感をフル活用して焙煎作業を行うそう。これが双実堂コーヒーの味の決め手なのです。

淹れることが楽しみになるようなおいしいコーヒー豆を提供し続けたい

玉田さんは生まれも育ちも、金沢文庫。コーヒー豆に心奪われたのは子どもの 頃だそうです。母親 のおつかいで訪れた近所のコーヒー豆店で、挽き立ての豆の香りに魅了されたのだとか。大学進学 と同時に東京へ移り住みましたが、卒業 後に 結婚式場の仕事をしていたときも、すきま時間に自分で豆を挽いて、コーヒーを楽しんでいたのです。 休日に時 間が取れると、豆店が開催する ワークショップに参加 したほか、旅先 ではその土地のコーヒー豆店を訪れ、知見を広げました。

近年、大手カフェチェーンやコンビニなどで手軽にコーヒーを飲めるようになってきた中で、「やはり自家焙煎した豆で淹れたコーヒーが品質、鮮度がよく、香りや味わいに顕著に反映され、おいしい」と幸せを感じました。いつしか玉田さんは「私もいつか人々がおいしいと満足し、心が豊かになるようなコーヒー豆を作って販売していきたい」と思うようになったそうです。

おいしい豆を目指すも、焙煎しては捨てる日々。客の一言が救いに。

玉田さんが追求したのは、飲んでおいしいことはもちろん、淹れることが楽しみになるようなコーヒー豆。抽出や焙煎の技術もとても重要ですが、それ以上に原料である生豆自体の品質が肝になります。高品質なコーヒー豆は決して低価格ではありませんが、生産者が継続的においしい豆を栽培できるだけの利益を守ることで品質維持に貢献しているのです。

「生産者の方々、生産処理や選別に携わった方々、流通の方々、コーヒーの商社や専門業者の方々、そして私にコーヒー豆がつながりました。私は最後に消費者であるお客様と接する重要な役割を担っていることを自覚し、ただコーヒー豆を販売するだけではなく、そのコーヒー豆が持つ背景をお客様へお伝えし、ご自宅でもおいしく淹れられるようサポートしていきたいです」

しかし、そんな玉田さんも「振り返ると、開業当時は苦労した」と言います。

「全てが未熟でしたので、焙煎しては納得できず泣く泣く廃棄することも多かったです。試行錯誤しながらの営業でしたが、お客様の『おいしかったよ』『応援してるか
ら頑張ってね』という優しい言葉に支えられ、お客様が本当に満足されるコーヒー豆を作ろうと頑張りました。一生勉強です」

一般的 なコーヒー豆店は「女性一人では入りにくいお店が多い」と感じていた玉田さん。女性や、若い男性などこれまで豆店に入ったことのない人でも入りやすいように、あえてコーヒー豆店らしくない、おしゃれな内装にしました。店内に飾るドライフラワーは 卸先 のカフェの従業員 に選んでもらったそうです。すると、双実堂コーヒーの常連客の多くは20〜40代の女性になったのだとか。

「カフェみたいな雰囲気なので、お客様ものんびり過ごされる方が多いです。コーヒーの話はもちろんしますが、コーヒー以外の話のほうが多いかもしれません。恋愛相談から介護の話まで。気づけばお悩み相談に発展することもよくあります」

せっかくなら専門的 な知識 のある方に聞いてもらったら良いと、 銀座 などで 占い師として 活躍 する地 元の友人に 声をかけ、いつも豆を卸すカフェで月に一度 占いの 会を開催。事前予約であっという間に席が埋まるそうです。

お客様とのつながりを大切にしている玉田さん。少しずつお店も成長しているといいます。

「コーヒーはとてもシンプルです。シンプルが故に良いものとそうでないものの差がはっきりと出てしまいます。これからも勉強し続け、ひたむきに取り組んでいきます。そして、お客様においしいと思っていただけるコーヒーを作り続けていき、楽しみ方をより深めていけたらと思います」

 

 

双実堂コーヒー

金沢文庫駅から徒歩3〜4分ほどの落ち着いた雰囲気の泥亀という町で、美味しさ・鮮度にこだわったコーヒー豆の販売を行う。

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