よりみちガーデンとは?

かなざわ人物語

対談インタビュー

2022.10.20

「誰かとつながり、新しいものが生まれる場所になってほしい」よりみちガーデンのリニューアルに隠された思い 京浜急行電鉄株式会社 山崎茜さん、小田楓さん

金沢文庫駅から歩いて10分のところにある、よりみちガーデン。金沢区で暮らす人、訪れる人が気軽に立ち寄ることができるコミュニテイ広場として2021年3月に誕生しました。

そんなよりみちガーデンがリニューアルをし、2022年12月、新たにシェアキッチンとして生まれ変わります。

よりみちガーデンの役割、そしてこれからどのような場所になっていくのか。よりみちガーデン開業に携わった京浜急行電鉄株式会社の山崎茜さんと、同社で金沢区のまちづくりを担当する小田楓さんにお話を伺いました。

 

このエリアに関わるすべての人に意味がある場所にした「よりみちガーデン」

――改めて、よりみちガーデンが開業するまでの経緯を教えていただけますか。

山崎さん:当社が「プライム金沢文庫」という新築分譲マンションのギャラリーを作ることになったのが大きなきっかけでした。せっかく作るなら「マンション購入を検討される方が金沢区を知ることができる場になるようにしたい」「金沢文庫に関わるすべての人にとって意味がある場所にしたい」と思ったんです。

営業スタッフや販売スタッフからだけでなく、地元の人からこのエリアの情報が聞けたり、地元の人たちと直接交流できたりする場を作るにはどうしたらいいのかと考えた結果、今のようなコミュニティスペースや広場が併設された形になりました。

 

――よりみちガーデンの空間づくりやハード面などで工夫された部分はあるんですか?

山崎さん:メインとなるマンションギャラリーに入りやすいようにする、という点ですね。

全面ガラス張りになっていて、中にあるマンションの模型が夜でも光って見えるようにしていました。周辺に住んでいる住民の方や、よりみちガーデンのイベントに来た人も観ることができるようになっていて、この近くにマンションができることを地域の皆さんに認知してもらえるようにしたのです。その効果もあってか、飛び込みで来てくださるお客様もいましたし、マンションの販売進捗にもつながったのかな、と思います。

また、マンションギャラリーに来られた購入検討者が、帰りがけによりみちガーデンのイベントに参加して、キッチンカーのコーヒー屋さんから「このあたりは住みやすいよ」と声をかけてもらうこともあったみたいです。そういった目には見えない副次効果もあったのかな、感じています。

 

イベントを重ねるうちに、地域の人の憩いの場所として成長

――オープンされてからクローズまでの1年半弱でしたが、地域の皆さんの反響はいかがでしたか。

山崎さん:もともとこの場所で当社が商業施設を展開していたことがあったので、ここが京急所有の土地であることはみなさん知っていらっしゃったと思うんです。でも、最初の半年ぐらいは地域の皆さんも「ここで何やってるんだろう?」という感じだったと思いますね。そもそもマンションギャラリーとして認知されていたのかも分かりません。当然リピーターの方もほぼいませんでした。

でも、1年半弱で大小含めて100本以上のイベントを実施しているうちに、地域の住民の方からは「こういう場所が欲しかった」という声をいただくようになりました。実はこのエリアはカフェなどがあまりないこともあって、よりみちガーデンでのキッチンカーやマルシェが代わりの役割を果たしてくれていたようです。

――よりみちガーデンが少しずつ地域に受け入れてもらえるようになったきっかけはあったのでしょうか。

山崎さん:最初の方は、パンマルシェの開催やコーヒーのキッチンカー出店が多かったのですが、移動本屋さんやアパレルの移動販売車が来たりとか、徐々にイベントや出店者の種類が増えたことも大きかったと思います。自分でも出店したいと思っていた人や、地元に住んでいて教室をやってみたいと思っていた方が声をかけてくれることが多くなりました。

そのうちお客さんも増えてきたんです。大々的な告知はしてなかったのですが「よりみちガーデンでは毎回何かしらイベントをやってるらしい」という話が口コミのように広まっていきました。

地元にはコミュニティやイベントなどを手がけている有名な方も多くいらっしゃって、そういった方々がよりみちガーデンにも遊びにも来てくれて、見えないところで広めてくださっているんだと思いますね。

――7月にクローズするまでに、当初の目標は達成されたのでしょうか。

山崎さん:マンションを完売させることがよりみちガーデンの目的の一つでもあったのですが、計画より前倒しで達成できました。よりみちガーデンも一定の役割を果たしたと思いますね。

もう一つの目的が、よりみちガーデンを残していくことです。マンションが完売したとしても、せっかくここまでイベントでやってきたのだから、できるだけ残したかったんですよね。

マンションが完成するのは来年の3月ですが、居住者の離れの共用部として活用できる場所になればと思っています。

 

シェアキッチンにリニューアルする理由

――新しくシェアキッチンとしてリニューアルすると決めたのはどういうきっかけだったのでしょうか。

小田さん:実は、よりみちガーデンができたころからあったアイデアでした。このエリアにはカフェも少なくホッと一息つく場所がので、気軽に立ち寄って地域の交流が図れる場所をつくれないかな、という話を担当同士で話していたんです。

 

――カフェなどを誘致する方法もあるなかで、あえてシェアキッチンという形態にされた理由をお伺いしたいです。

小田さん:金沢区は郊外住宅地なので、いわゆるベッドタウンとしての機能に特化している状態でした。でもコロナ禍で生活への価値観が変化するなかで、まちに求められる機能は多様化しており、いろんな活動を生み出していかないと、金沢区の中で新しい発見や新しい体験が生まれない。そのための方法の一つとして、エリアの中で活動するプレイヤーを増やしていきたいと思っているんです。

一般的なテナントを誘致することもできたかもしれないですが、そうじゃなくて新しく一歩踏み出したい人や、夢があるけど、どうやったら実現できるかとためらっている人たちの後押しをしていきたかったので、シェアキッチンという方向にまとまりました。

 

――リニューアル後、地域の皆さんにどのように活用していただきたいですか。

小田さん:少しでもこの街で何かしてみたいと思っている人が、よりみちガーデンに足を運んで、利用者同士相談したり、話しているうちに何か新しいことが形になっている……みたいな場所になっていってほしいと思っています。

今回のリニューアルでは、シェアキッチンだけでなく、例えば少人数のサロンや習い事などの小さなイベントができるようなブースを作っており、マルシェなどのイベントができる屋外スペースもあるので、かなり多様な活動を受け入れられるつくりなっていると思っています。「金沢区でなにか新しいことをはじめたい」と思った時に、とりあえずよりみちに行ってみようと思ってもらえたら嬉しいです。よりみちガーデンで生まれた活動がよりみちガーデンがなくなったとしても継続していくようにサポートしたいですね。

ただ、よりみちガーデンは活動しなきゃいけない場所でもないと思っているので、気軽に寄っていただくだけでも嬉しいです。そこでつながりが生まれて、またちょっと寄ってみよう、と思ってもらえる場所になるといいですね。

――今後、よりみちガーデンを金沢エリアでどんな存在にしていきたいと考えていますか。

小田さん:ただの活動拠点ではなく、アイデアを持ち込んで誰かとつながり、つながることでこの街に新しいものが生まれるプラットフォームにしていきたいですね。

まだ構想段階なのですが、よりみちガーデンの利用者のコミュニティを育てていきたいと思っています。施設を「使っている人」ではなくて、「施設を作っている一員」と思ってもらえるようなコミュニティ制度を作りたいですね。

 

山崎さん:京急沿線に住んでいない人から京急沿線を選んでもらえるようになるのが私のミッションでもあります。そういう視点でいうと、単純に「金沢区っていいじゃん、住みたいな」と思ってもらえる場所になってほしいですね。

そのためには、よりみちガーデンがエリアの価値を上げるような象徴的な取り組みになればいいと思っています。「金沢区に住むと自分のやりたいことができる」とか「金沢区に住むと何か面白いことが常にやってる」と思ってもらえるような存在にしたいですね。

 

***

さまざまな人をつなぐ場所となっているよりみちガーデン。少しずつ、交流の場所として認知されつつあります。

ひとつの役目を終え、また新たな目的に向かってスタートをきるよりみちガーデンで、どのような出会いが生まれ、新たなものが発信されていくのか。金沢区の未来にワクワクするインタビューでした。

山崎 茜さん(京浜急行電鉄株式会社)

2014年京浜急行電鉄(株)入社。そこから約4年間、横浜市金沢区に居住。金沢区の好きなところは、「治安のよさ」と「コストコがあるところ」。現在は京急の不動産事業(住宅)を担当。主に新築分譲マンションの商品企画や広告プロモーション、事業全体のプロジェクト推進を担う傍ら、2021年3月には地域コミュニティ型マンションギャラリー「よりみちガーデン」を開業。年間100本以上のイベントを通じて出会った人たちや光景が宝物。

 

 

小田 楓さん(京浜急行電鉄株式会社)

1995年新潟県生まれ。横浜市立大学出身。
大学時代にデンマークへ留学、参加型デザインや北欧の民主主義のあり方に触れる中で、住民参加型のまちづくりに関心を持つ。帰国後、横浜市立大学公認サークル三浦半島研究会の創立メンバーとして、三浦半島でのフィールドワークやフリーペーパーの制作に関わる。京浜急行電鉄㈱に入社後は、横浜市金沢区のまちづくりを担当。郊外住宅地における、地域・企業・学校・行政の4者協働のまちづくりに奮闘中。

 

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